現在執筆を計画中のweb小説。その冒頭部分の試作稿です。
取り敢えず書いてみて、ホームページに上げてみて…次の同人誌イベントか何かででもリアクションを頂けたら嬉しいです。
もちろん、ブログコメントやツイッターでも是非とも。
(仮題)猟犬になった少女。–天使が見た世界–
無表情な少女が白いスクールシャツを赤い鮮血に濡らして佇む姿は、散り忘れていた桜が舞う月夜の山中に異彩を解き放っている。
その少女の小さな手に握られているのはグロックという名のオーストリア製の自動拳銃。
この暴力の象徴は、明るい色の長髪を2つに纏めて下ろした少女の愛くるしさを台無しにしてしまっている。
東京から3時間。ひび割れたアスファルトと生い茂った木々が放置された年月を物語る廃道と、その傍らにある刑務所を思わせる古びたコンクリートの大壁。
ここは訪れる人間も稀な自然が豊かすぎる陸の孤島。
少女は一呼吸を置いて静かに銃を構える。
少女の目に映るのは、灰色の作業服を着たレスラーを思わせるような大男。
地面に座り込みブナの木に力なくもたれかけたその顔は不意を突かれた憎しみと、近い未来に迎える終焉への怯えに支配されている。
「最後に言いたいことはありますか?」
物騒でありながらも可愛らしい声に男は気づく。
無骨な銃が台無しにしているはずの愛くるしさを補って余りある無表情な顔の美しさに。
それが男が見た最後の光だった。
男は目を閉じる。すでに胸から吹き出す鮮血に男の声は奪われている。
「ごめんなさい。これが私の正義だから…」
男が聞いたこの世での最後の言葉は、幼い声質に似つかわしくない冷徹な音色をしていた。
男が聞いたこの世での最後の音は、今まで自分自身が奏でていた聞き覚えのある殺意に満ちた乾いた破裂音だった。
その音は、上空100mを静かに漂い状況を観察していたドローンにも届いた。